昼食を済ませ「山海荘」を出たら、
おかみさんが時計台まで送ってくれて道順を教えてくれた。
神島の人は伊良湖岬へ行くことはほとんど無く、神島からの交通手段は圧倒的に鳥羽経由なんだそうだ。
また、「ニワの浜からの帰り道は海縁を通るより学校への通学路を通った方が速いよ」と教えてもらった。
このアドバイスが二度目の危機を救うことになる。
画面右手の後ろ姿の女性がおかみさん。
神島周遊のスタートは、画面左手奥の階段から始まる
当時は水道が無く、女性たちがこの洗濯場で少ない流水で洗濯をしていた。
坂道の途中で振り返ると、神島港越しに海原が見える。
当時の小学校の跡地が今は保育園になっている
途中、ヤマアジサイや紫陽花に励まされながら、ひたすら坂道と階段を登る。
頂上近くに来ると、「左側(海側)が崖注意」という標識が現れる
そして、ところどころ草木の切れ目から午前中に散策した伊良湖岬が見えてくる
真横に行きかう船の通り道が「伊良湖水道」。
更に桟道を越えていく
そして灯台が目に入ってきた
小説の当時にあった灯台長の家は、今はもうない。無人の灯台である。
新治と初江の恋は初江の父照吉の逆鱗に触れ、二人は会うこともままならず心を通わす手段は置手紙のやり取りだけになっていたが、それも照吉に見つかり完全に遮断されてしまう。
初江は父照吉に、新治との清い関係、安夫の暴行未遂事件を話すも照吉は聞く耳を持たない。
そうこうするうちに、
照吉は安夫と新治に、所有する船のうち沖縄に材木を運び帰りは屑鉄を運ぶ用船「歌島丸」の船員に ならないかと声をかける。この当時の沖縄は国外扱いであった。
安夫は確信を持って、
新治は微かな希望を持って船に乗り込む。
出航の時、安夫の見送りには初江を含む多くの人が来たが、新治の見送りは母親を含め数名のみであった。
しかし、初江は新治の母親を通じて新治に自分の写真を渡す。
沖縄に無事荷の材木を届け、帰り便の鉄屑を積んで出港したが、
猛烈な台風が襲い掛かり船は必死で沖縄に戻る。
港で、他の船の助けを得てブイにロープやワイヤで船を固定する。
風雨はますます激しさを増し、ついに一本のワイヤが切れてしまう。
船長は誰か命綱をブイに結びつける者はいないかと聞く。
新治は一瞬逡巡したことを恥じながら名乗りをあげる。命綱を腰に巻き付け荒波の海に飛び込んでブイを目指す。泳げども泳げども前にに進まずブイは永遠の向こうにあるように感じる。
それでも、歌島の周囲4周も泳ぐことが出来る新治は、何とかブイにたどり着き命綱を結んで再び荒波のなかに飛び込み船に戻った。
新治は船を遭難から救った。
初江は、自分の写真が新治を支えたと誇らしく思う。
千代子から、新治と初江のあらぬ噂を流したと聞いた灯台長の奥さんは、他の海女の応援も受け、
二人の中を認めるよう照吉に箴言する。
照吉は答える。
「男は気力や。新治は初江の婿になる男や。」
そして、小説のラストシーンは挨拶に訪れた灯台長から灯台の中を案内された灯りに照らされる二人の姿だった。